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こどものむし歯とむし歯菌のはなし(その1)

2017年10月5日(木)に横浜臨床小児歯科座談会に参加してきました。講師は日本歯科大学附属病院小児歯科教授の内川喜盛先生に「小児う蝕とミュータンスレンサ球菌との関係について」と題してご講演いただきました。

歯科医にとってむし歯(う蝕)と歯周病の2大疾患は永遠の課題といっても過言ではないでしょう。最新の知見をうかがうことができました。

むし歯の原因菌はレンサ球菌の一種ミュータンス菌ですが、むし歯のない子どもとむし歯のある子でミュータンス菌の比率を比べるとむし歯のあるこの方が約3倍多いことがわかったそうです。しかしレンサ球菌自体の量に差はなく、レンサ球菌に占めるミュータンス菌の比率の問題であることが示されました。

ここでむし歯の成因を考えます。

 

砂糖はミュータンス菌に分解されグルコースとフルクトースになります。それぞれの糖から酸が産生されますが、それだけではむし歯にはなりません。グルコースから非水溶性(不溶性)グルカンという歯に張り付くためのネバネバ産生され、ミュータンス菌の菌塊(プラーク)が形成されます。歯の表面にプラークが形成されなければむし歯の心配はありません。

では、ミュータンス菌の感染は何時起こるかです。母子感染が一般的ですが、歯がなければミュータンス菌は定着できません。生えはじめで上の前歯にむし歯ができてしまう場合もありますが、内川教授によれば第一乳臼歯(最初に生える奥歯)の萌出から第二乳臼歯の萌出(乳歯列完成)までのあいだがいわゆる「感染の窓」が開いている状態だと考えられるといってました。年齢でいうと1歳半から2歳半あるいは3歳のお誕生日くらいでしょうか。この時期に感染がないかミュータンス菌の比率が少なければその後のむし歯の心配はかなり減らせます。感染成立後半年くらいでむし歯が発生することが多いのですが、5歳の時点でむし歯がなければかなりの確率でカリエスフリー(むし歯なし)でいけるということでした。

私事ですが、娘と息子は生え変わりで抜けた乳歯をみると歯の合わさり目に初期のむし歯はありましたが、削っての治療をしたことがありません。現在、高校生と大学生ですがカリエスフリーです。歯の合わさり目に初期のむし歯があったということはミュータンス菌には感染しているのだと思いますが、おそらく比率が少ないのでしょう。そういえば小さいときはあまりお菓子とか与えなかったので、友人宅でお菓子を出されるとがっつくので恥ずかしいおもいをしたのを思い出しました。それでも誕生日にケーキは食べたし、ファミレスに行けばドリンクバーでジュースは飲んでいましたから、決して禁欲的だった訳ではありません。生活の彩としてのお菓子やジュースで家には極力買い置きをしないようにはしていました。

話を戻しますね。ミュータンス菌のいない2歳児はミュータンス菌のいる子に比べて砂糖の摂取量が20%以上少なかった(11歳時にはどちらもほぼ同じ砂糖の摂取量になっていたが)ことから、低年齢時の砂糖の摂取量がミュータンス菌の定着に影響があることが示されました。ミュータンス菌の感染に関わる食餌因子としては、①砂糖の摂取、②母乳、③哺乳瓶の使用だということでした。砂糖の摂取については、砂糖含有のスナックや飲料の高頻度摂取がミュータンス菌の早期の感染、高濃度のミュータンス菌のレベルにつながるということでした。哺乳瓶の使用とミュータンス菌の感染については、哺乳瓶でのう蝕原性飲料の摂取と夜間の哺乳瓶の使用が関連がするということでした。

フッ素とミュータンス菌の関係については、フッ素が菌の糖代謝系酵素に対して阻害作用があり、また菌の酸に対する抵抗力を弱めるもあるということでした。フッ素が歯の再石灰化促進因子であったり、歯質を強化することは知られていますが、ミュータンス菌にも抑制的に働くことがわかりました。

ではむし歯予防とその対策はどのように考えられているのでしょうか? 次回はむし歯予防のための代替糖とむし歯が多い場合の対策をお伝えしていきます。

 

二子玉川ステーションビル矯正・歯科

高見澤 豊