むし歯の罹患率の上昇は、原因菌ミュータンスレンサ球菌に感染・定着してから、6~12か月後になるといわれています。ミュータンス菌が定着するには歯が萌出していることが必須で、一般的には1歳前後に定着が始まるといわれています。
萌出直後のエナメル質は十分に石灰化していないのですが、唾液中のカルシウムやリンを取り込んで石灰化が進みます。このことを萌出後成熟といい、一般に萌出直後の歯が最もむし歯になりやすいといわれています。ミュータンス菌の感染が遅ければ、歯の萌出後成熟が進み発生するむし歯が減少します。
2歳ごろまでは上顎前歯唇側面(前歯の表側)、2~3歳ごろまでは上顎前歯隣接面(歯の合わさり目)が好発部位といわれています。下顎前歯部は磨きやすいのですが、顎下腺や舌下腺の出口が下の前歯の近くにあることから自浄性が高く最もむし歯になりにくい部位です。ですから、1~2歳の間は上の前歯を中心に磨いていくのが大切です。
卒乳が遅い場合、乳首が上顎前歯の裏側の口蓋(こうがい)に位置するため、上顎前歯部に母乳またはミルクが停留しやすくむし歯の発生率が高くなります。1歳6か月で授乳している場合は卒乳している子どもに比べむし歯の罹患率が3倍という報告もあります。とくに就寝時の授乳がやめられない場合が多く、就寝中は唾液の分泌量も減るため、むし歯も進行しやすい傾向がみられます。授乳後、お茶やお水を飲ませたり、歯磨きシートなどでお口を拭いてあげられるといいですね。
3歳のお誕生日過ぎたら、奥歯のかみ合わせがむし歯の好発部位です。上顎第二乳臼歯の後ろ側の溝(赤線)は見えづらいので要注意です。
3歳6か月以降は奥歯の間にむし歯ができやすいので、フロスをしましょう。フロスが引っかかったりほつれたりしたら、歯の間にむし歯できている可能性大です。
6歳ごろにEの後方に6歳臼歯(第一大臼歯)という永久歯が生えていきます。この6歳臼歯とEの隣接面にむし歯が7~8歳以降できやすいので注意が必要です。
二子玉川ステーションビル矯正・歯科
小児歯科担当 髙見澤 豊