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PEARS(小児救急 評価・認識・病態安定化)の講習受講しました

昨秋、AHA(米国心臓協会)のBLS(一次救命処置)の講習会を受講しインストラクターの先生より、「小児を中心に診ているならPEARSの受講を」と勧められ2月に日本ACLS協会東京ラボ(浜松町)で受講しました。

午前9時半~午後18時ごろまでの長丁場で、内容的にも非常に濃いものでした。

まず最初は、乳幼児と就学前幼児のBLSの復習と実技試験。これは全く問題ありませんでした。PEARSの本体の受講になり、4名ずつの2班に分けられました。歯科医は私だけで、医師と小児病棟の看護師というメンバーでした。実際の患者さんのビデオをみながら、まずは3秒で初期評価として反応レベル(意識なし、易刺激的、意識清明など)、呼吸仕事量(仕事量の増加、呼吸努力の消失または減少、呼吸音の異常)、循環(皮膚色)(チアノーゼ、蒼白、まだら模様など皮膚色の異常)をチェックし、ただちに介入すべきか判断します。

介入が必要と判断した場合は、ただちに救急対応システムに通報します。次いで一次評価をABCDEの順にします。Airway(気道)は開通している、開通を維持できる、開通を維持できない。Breathing(呼吸)は、呼吸数と呼吸パターン(正常、不規則、速い、遅い、無呼吸)、呼吸努力(正常、増加(鼻翼呼吸、陥没呼吸、頚部の上下首振り、シーソー呼吸)、不十分(無呼吸、弱い啼泣または咳))、胸部拡張および気流(正常、減少、左右差、呼気の延長)、異常な肺音と気道音(喘鳴(ぜんめい)、いびき、犬吠様咳嗽(けんぼうようがいそう)、嗄声(させい)、呻吟(しんぎん)、呼気性喘鳴、ラ音、左右差)、パルスオキシメーターによる酸素飽和度(正常な酸素飽和度94%以上、低酸素血症94%未満)。Circulation(循環)は、心拍数(正常、頻脈、徐脈)、脈拍(中枢側、末梢側でそれぞれ正常、微弱、なし)。介入が必要な場合は呼吸と脈の有無で異なります。呼吸も脈もなければ一次救命処置を開始します。脈ありで呼吸がない場合は気道を確保し、換気を開始します。脈あり呼吸ありの場合と救急対応システムに通報しなかった場合は気道、呼吸、循環に障害があるか検討し、必要に応じて気道、換気、循環を補助し必要に応じて酸素を投与します。Disability(神経学的評価)は、AVPU小児反応スケールと瞳孔径・対光反射、血糖値を用いて評価します。 AVPU小児反応スケール はAlert(意識清明)、Responds of Voice(声に反応)、 Responds of Pain(痛みに反応)、Unresponsive(意識なし)であり、頭文字で評価を記します。Expoure(全身観察)は体温と皮膚の状態(発疹や紫斑の有無、外傷など)。適宜、再評価しつつ対応していきます。

呼吸障害も吸気性喘鳴や犬吠様咳嗽があれば上気道閉塞を、吸気性喘鳴あれば下気道閉塞を、ラ音や頭部の上下首振り呼吸があれば肺組織疾患を、呼吸数や呼吸パターンの変動や不規則などがあれば呼吸調節障害を疑うなどして重症度の判定をします。その上で呼吸器系緊急事態に対して呼吸障害ごとに対応していきます。アドレナリンの吸入や注射、ステロイドや抗生剤の投与などいろいろありますが、歯科医院での偶発症や可能な処置でいうと酸素投与や気道の確保、補助換気くらいでしょうか。

循環器障害には、循環血液量減少性ショックと血液分布異常性ショックがあり、前者では皮膚色の変化(蒼白、まだら模様、チアノーゼ)、皮膚冷感、毛細血管再充満時間の遅延などがあり、後者では温かく紅潮した皮膚、正常な毛細血管再充満時間などがあります。ここでも歯科医院での対応は、高流量酸素投与、気道の確保、換気の補助に留まります。

だらだらと難しい話しを書いてしまいましたが、系統的に状態把握、評価、対応法が学べたことは良かったと思っています。

テキストと早見表
乳児の一次救命処置の実習
PEARSの修了書

二子玉川ステーションビル矯正・歯科

小児歯科担当 髙見澤 豊