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子どものネット・ゲーム依存症について

2024年5月16、17日にメルキュール横須賀で第62回日本小児歯科学会大会が開催された。

「子どものネット・ゲーム依存の現状と対応」と題して、久里浜医療センター名誉院長 樋口進先生の教育講演があった。

ネット・ゲームの依存の弊害として、身体への影響としては脳の萎縮、骨密度の低下、体力の低下、栄養の偏り。精神への影響では、睡眠障害、昼夜逆転、ひきこもり、意欲の低下、うつ状態、自殺企画。学業仕事への影響では、遅刻、欠席、授業中の居眠り、成績の低下、留年、退学。経済的影響では、多額の課金、投げ銭。家族対人関係への影響では、家族への暴言・暴力、親子関係の悪化、リアルの友人関係がないことなどが挙げられた。

依存とは、ある行動の行き過ぎ(快感・ワクワクを引き起こす物質・行動)によって明確な健康・社会問題が起こると依存となるが、 明確な健康・社会問題が起こらなければ単に使い過ぎとなるという。

ネット・ゲーム依存症の有病率は10~14歳で10.4%、15~19歳で12.0%と高い有病率であり正直驚いた。

演者の樋口先生が歯科の学会なので気を使っていただいたのか、ネット・ゲーム依存症患者の口腔衛生にも言及され、口腔清掃不良、う蝕の発生、ソフトドリンクの多飲に触れていた。これらは明らかに増加傾向がみられた。

8~12歳の若年者に対するゲーム依存症に対する治療エビデンスが不足しているという。若年者は、依存症の問題への理解が低く、治療動機づけの難しさ、衝動のコントール能力の発達が未熟、治療プログラムへの理解がうまくできない点などが問題としてあることから、予防が重要としていた。私事ではあるが、自分の子どもたちにゲームを買い与えなかったことは良かったと今でも思っている。

注意欠陥多動性障害(ADHD)とネット・ゲーム依存症の親和性について、衝動性:ゲームが我慢できない、不注意:学校などでの不適応によりネット・ゲームへの逃避・依存があるという。症例では、ADHDの治療薬の服用し状態が安定してから4週間入院し、ゲームがなくても生活できそうだと自覚させ、退院後ゲームを減らしギターを習ったり、アルバイトをしてみたりして、高校への通学も再開したという。完全にゲームをなくすのは求めず、生活のなかにゲーム以外の場(アルバイトやギターの練習など)があることを気づかせたという。

自閉スペクトラム症(ASD)とネット・ゲーム依存症の親和性について、現実社会での不適応、こだわりも相まってネット・ゲームへの逃避・依存がみられるという。

ルール作りのポイントとしては、

1.使用時間を決める:使用時間帯と使用終了時間を決める。ルールはあまり細かく決めない。香川県の条例が参考になるという。

2.使用場所を決める:自室(子供部屋)は避け、皆のいるリビングなど目の届くところで使用させる。

3.使用金額を決める:課金は小遣いの範囲にとどめる。親に無断で課金させない。

治療目標は、断ネット・ゲームが理想だが、現実的には減ネット・ゲームし減った分現実の社会活動を増やすことが重要とのこと。

薬物療法としては、ネット・ゲーム依存症の薬は現状ではない。合併精神病の薬としてADHD治療薬やASD治療薬,、抗うつ薬などがある程度有効。

改善ための原則:周囲からの制限は困難。本人に動き出させることが重要。

他の活動に置き換える:ネットの時間を減らす。塾・学校での補習、部活・友人との付き合い、アルバイトなど。小さな変化の積み上げが大切とのこと。

1時間弱の講演だった非常に面白かった。

二子玉川ステーションビル矯正・歯科

小児歯科担当 髙見澤 豊