以前は完全脱落した乳歯の再植は、後継永久歯への感染等の影響が危惧され禁忌とされていた、2008年に日本外傷歯学会が発表した「外傷歯治療ガイドライン」 1) では、乳歯が脱落した場合、再植処置によって発育中の後継永久歯が損傷される可能性がある場合は再植しないと表記され、乳歯の再植が容認されるようになった。
自験例であるが、脱落後すぐに連絡をいただき適切な保存法で脱落歯を持参したことで、良好な結果を得られた症例を紹介する。
4歳1か月の女児で室内で転倒し、A|AB が完全脱臼した。受傷直後に電話が連絡あり、脱落歯は水で洗わず牛乳に入れて来院するか、牛乳なければ脱落歯を母親の口腔内で保管し来院するように指示した。電話終了後5分で来院した。
脱落したA|AB は、母親の口腔内で保管され来院したので、生理的食塩水中に移し替え院内で保管した。B| は偏位はないものの動揺がみられた。初診時のエックス線写真を示す。
受傷後10分程度来院し、脱落歯は 保存状態も良好であったので再植することにした。再植後、上顎全体を被覆するレジンシーネで固定した。
固定期間は5週間で、固定除去時に歯の変色や動揺はみられなかった。
固定除去10日後、受傷歯根尖部が少し腫れていると連絡あり、根管治療を開始した。貼薬には、水酸化カルシウム製剤を用いた。歯根に外部吸収もみられたので、水酸化カルシウム製剤は定期的に交換した。外部吸収が止まったのを確認してから、通法に従いヨードホルム・水酸化カルシウム製剤で根管充填を行った。
6歳11か月時のエックス線写真から、歯の生え代わりは順調に進んでいると判断できた。
今回乳歯完全脱落した症例に遭遇したが、脱落歯の保存状態も良く直ちに再植できたことで良好な結果を得ることができたと考えられた。
二子玉川ステーションビル矯正・歯科
小児歯科担当 髙見澤 豊