私個人の考えですが、グラグラの乳歯は健常者であれば基本的に抜歯は不要だと思います。ただし、脳性麻痺などの障害児では誤嚥の可能性もあるため、積極的に抜歯した方が推奨される場合もあります。私が以前学会報告した患者さんの例をお示ししたいと思います。
3歳10か月の脳性麻痺の女児で気管切開を受けていました。主治医が偶然に撮影した胸部エックス線写真で右気管支に乳切歯を認めました(図1)。同日の午後誤嚥した乳切歯の位置確認のため、胸部エックス線写真を再撮影したところ、左気管支に歯は移動していました。誤嚥した乳切歯は吸引により摘出しました。
図3に示すように左右気管支の分岐の角度が成人と小児では異なることから、成人の気管支異物は右気管支に入りやすいのです。本症例のような幼児では、体位の変化で容易に異物が移動したものと考えられました。
二子玉川ステーションビル矯正・歯科
小児歯科担当 髙見澤 豊