乳前歯では、しばしばみられる異常として癒合歯というものがあります。その発現頻度は3〜5%程度といわれています。過剰歯は混合歯列期によくみられる異常ですが、乳歯列期に過剰歯がみられる頻度は0.07〜0.2%と低いことから、乳切歯2歯と過剰歯の3歯が癒合する頻度はさらに低いと考えられます。
今回は、左側乳中切歯と乳側切歯ならびに過剰歯の3歯がいわゆる癒合したtriple tooth の齲蝕処置を経験したので、若干の文献的考察を加え紹介します。
【症例】
患児:初診時年齢2歳2か月の男児
主訴:上顎左側前歯の齲蝕
既往歴:特記事項なし
家族歴:兄が3歳時に正中頚嚢胞(甲状舌管嚢胞)の摘出術を受けた以外、特記事項なし。
口腔内所見:第二乳臼歯を除く、すべての乳歯が萌出しており、左側乳中切歯と乳側切歯ならびに過剰歯の3歯の癒合を疑う形態異常歯を認めました。齲蝕は、形態異常歯の癒合部のみに認めました。
【処置および経過】
処置としてまず齲蝕進行抑制剤(サホライド®)を塗布し経過をみてみた。齲蝕の進行を認めたため,2歳7か月時に生活歯髄切断ならびにレジン修復を行った。
乳中切歯相当部と過剰歯相当部の歯髄切断は良好と思われた。
生活歯髄切断を行った歯根に吸収がみられたが、動揺は生理的範囲内であった。
5歳6か月時に転倒し,上顎前歯部をコンクリート床にぶつける。右側乳中切歯と乳側切歯は動揺度1度、左側癒合歯は動揺度2度で、4週間スーパーボンドで固定しました。
固定除去時、右側乳中切歯と乳側切歯は生理的動揺に、左側癒合歯は動揺度1度に改善しました。
6歳5か月時、動揺度2度となった。
7歳1か月時、 右側中切歯萌出開始、左側中切歯半萌出して癒合歯の脱落確認しました。
文献検索より発現頻度に男女差はなく、上下顎ともにみられることがわかりました。
処置した癒合歯が永久歯に問題なく交換できてよかったです。
二子玉川ステーションビル矯正・歯科
小児歯科担当 髙見澤 豊