永久歯歯根破折歯は適切な位置に復位させ固定することで、破折部が硬組織の形成により再接着することが知られています。通常、歯根中央部あるいは歯頚側1/3での破折では隣在歯との固定は1~3か月といわれていますが、歯頚部の比較的浅い歯根破折については報告例が少なく1)、一般的には、破折線が歯槽頂を超え歯肉溝に接近している場合は、石灰化組織による治癒は生じないといわれています2)。今回、当院に来院し、歯頚部で歯根破折した症例で隣在歯との固定を試み、破折部の再接着がみられたので紹介いたします。
【症例】小学校中学年の男児
下顎中切歯を受傷、歯がぐらぐらすると来院しました。動揺度2度(前後左右方向に1mm程度動く感じ)で歯頚部付近での破折が疑われました。エックス線写真から歯槽骨の上端付近に位置する破折線が複数みられました。
【処置ならびに経過】歯頚部で破折している場合は、歯冠部を取り除き歯の神経を取り除いた上で差し歯にするのが一般的ですが、今回は保護者と協議の上、再接着を期待し固定処置を行うことにしました。
破折線が明瞭な部分があるので、固定を継続することにしました。
固定除去時のエックス線写真では、破折線が不鮮明になっていることから治癒良好と判断しました。動揺はなくなっていました。今後、より一層治癒が進み破折線が消失するものと予想されます。
歯の神経も生活しており経過良好です。
【参考文献】
1)金井恵未,宮新美智世,上原智己ほか:歯頸部歯根破折を生じた下顎左側側切歯の17 年後の経過を評価した1 例,小児歯科学雑誌60(3):141–147,2022
2)有田憲司:小児外傷における歯根破折歯の処置,小児歯科学雑誌47(5): 683−692,2009
二子玉川ステーションビル矯正・歯科
小児歯科担当 髙見澤 豊